goodlike-story

♪ いつでもどんな時でも《前に進む道しかない》

この世に楽な仕事は一つもない(3)

飯場土方作業員

♪ この世界に飛び込んでみた・心身ともに自分を変えてみたかったこともあるが、なぜだか・この仕事を一度はやってみたいという好奇心もあった、原点に戻れるような気がした・・人類起源の男仕事でもある。

博多に行くことにする、知り合いには会うつもりはないが、永らく遠ざかっていた一番大切な母親を少しでも傍で面倒を見て上げられたら、との思いもあった、、

駅から歩いて15分ほどだった、五階建ての壁に募集の張り紙がしてある、、入口のドアーを軽くノックして開くと親方がソファーに座っていた・・

募集の張り紙を見て来ました・・仕事をやりたいんですが、答えは二つ返事だった、待遇は日給9千円・部屋代と朝食で月5万円が差し引かれるようだ

すぐに3階の部屋に案内される、ドアーを開けると入口は縦横60cmほどの空間があり部屋は畳三畳のスペースと縦横60cmの押し入れ、エアコンなし・風呂なし・共同トイレと洗面所がある・・銭湯通いだなー

2・3・4階に各8部屋がありほぼ満室だった、5階は親方夫婦の住まいになっている、他に通いの人夫もいるとか、布団は自前と言うのでさっそく布団を買って寝床の用意を済ませることに・これで明日から仕事だな~

難しいことは考えないことにしよう・・

♪ ここにはどんな人達が働いているんだろうか、この世界は一般社会とは少しかけ離れていて、恐いのかな~と云うイメージもあった・・

まあいいか・やるきゃない、、手持ちの仕事着はどれもジーンズが18000円・シャツ類は12000円、こんなんしか持ってない・・

♪ 朝が来た、5時半に起床し質素な朝食を済ませる・・今日から土方仕事のはじまりだなー、7時過ぎに一台の軽トラックが来た、OO電機と書いてある、

下請けの電気工事屋さんだった、車に乗せてもらい現場に到着する・空を見上げると雲一つないブルースカイだ~梅雨明け10日は好天気と言うがまさにその通りの陽よりだ

社長さんにハンマーとたがねを渡される、ハツリをやるからこのコンクリート壁を掘ってくれ(長さと深さを指示された)左手にたがね・右手にハンマーを持ち、ガンガンガンと打ち続ける、コンクリートを砕くと埃が舞う、どうしても吸いこんでしまう・ゴホゴホと咳込む・・今まで楽な仕事ばかりをやって来たんだなーと思いつつ壁にむかってガンガン・ガンと打ち続ける、

ハンマーを持つ右手が重く感じてきた、重い、右手が上がらなくなってくる、たがねの的を外して左手を何回か打ってしまう、痛い~それでも壁にむかって打つ、打つ、ひたすらに打つ、上を仰ぐと空はカンカン照りだ~

額と右腕から汗が出る、やがて背中・胸・全身に汗が拡がる、、昼時になりシャツを脱いで絞ると水滴になって落ちてきた・・

現場近くで弁当を買って食べようとしたが、手がしびれて箸が持てない、箸を握ってガツガツと食べようとしたが、喉もカラカラに渇いて食べ物が通らない、時間をかけて食べることにしよう・・

午後からは地べたのハツリだった、これを終えてパイプを取り付ける・その中に電線を通すことに、これでOK!なんとか一日は終わったが、慣れない仕事でクタクタになる

f:id:goodlike-ryusei:20210922154208j:plain

♪ 朝・晩は他の人達とも顔を合わすようになる、なんとなく~当初の思惑とは違ってた~と感じる、いかつい顔の人がいないのだ、皆さん目が優しい・・

部屋に戻り一人になると・・なにか変だなー、、誰かが歩いてる時の足音は聞こえるがシーンとしてる、静かすぎる・話し声が聞こえない、、とても20数人の男達が同じ建物の中に住んでるとは思えない、会話が聞こえないのだ・・

廊下で出会う先輩にそれとなく聞くことにした、あの人の名前はなんて言うんですか?・尋ねて答えられるのは五人に一人くらいしか知らないようだ、なるほどー

仲が悪いとかは感じられないし・きっかけがないのか・互いに遠慮をしてるのか・・

それではと策を講じることにした・・やってみよう、

顔を見合わせた先輩には、その都度あの人の名前は何と言うんですか、と尋ねることにした、、2週間でほぼ全員の名前は解った、それでは始めよう、、

♪ ことあるごとにわざとらしく大きな声で呼んだ、何々さん~何々さんと~名前を連呼して、大して意味もない挨拶をするようにした、、

効果てき面だった、ふた月も経たないうちにみんなが互いの名前を憶えてくれたようだ、、そして徐々にそれぞれが会話を交わすようになってきた、

それまでは顔を合わせても、話のきっかけを掴めなかったようだ・・本当は話をしたかったんだ~・・

それからは各部屋へはお互いが行き来するようになったようでドアー越しに笑い声が聞こえるようになった・・うまくいった・

ある日曜日に宮崎先輩が話しかけてきた、、あのな~OO号室の田中さんはお金を貯めて2年後になにかを始めるんだって言ってたぞー、と、言ってくれた時・・

やった~~・そういう話が聞きたかったんだ~・嬉しかった~・・ 

そんなこんなで仕事も身体も少しづつ慣れてきた・・

 

♪ ある現場の時・・昼休みだった汗を流し熱くなってる身体をコンクリートの上に寝そべると、ひんやりとしてなんとも気持ちが良いのだ、、

横にいた先輩に <結構つかれますよね> と言ったら、、先輩は言葉を返してくれた、 

       あ~ この世に楽な仕事はひとつもない・・! 

三ヶ月ほど経過した頃に後輩が入って来た 彼は見るからに遊び好きでのんべんたらりとした雰囲気だ~〈私は楽な道ばかりを選んで生きてきました〉と顔に書いてある、一緒に現場に行っても、あっちに行ったりこっちに来たりと、ただウロウロするだけで何もやっていない、なのに二言目にはキツイ疲れたと、言いながらくっついてきては傍を離れない・・

そんな彼に笑いながら言った・・ああ~そうかい・・この仕事はアスレチックやってお金がもらえるんだもんな・一石二鳥だ、ありがたや、ありがたや、、

楽しいと思うか・苦しいと思うかは、考え方一つで決めれることなんだ~・・

とは言ったものの、ありゃりゃ~今からは彼には疲れた表情を見せられなくなったぞー

だが、彼はそれから二週間ほどで姿を見せなくなった・・やっぱしな~遊び人にはこの仕事は無理なようだ・・

♪ おいらは運転手当を貰うことにした、どういうわけか皆さんは車の免許を持っていなかった(ひょっとすると何らかの事情で隠してるのかな~?)自社のマイクロバスで建築現場を往復するのだが・・

遠出の現場初日の仕事を終えてのことだった、さあ~帰ろうかと町中を走ってると、いきなり、次の信号を過ぎたところで止めてくれと云う、道路の隅に車を止まると・せきを切ったように皆さんが飛び出してゆく・座席を見ると一人も残らず、何事かと思えばそこは酒屋さんの前だった、

思い思いの酒とつまみを買っては車中で飲むのだ、最初は驚いたが毎日そうだった、、ふ~ん~なるほどね・・ 

その答えはすぐに返って来た、その日は現場が近かったので汗を流した帰り道に、皆と一緒に酒屋に寄ったみた・・大好きなビールを一口飲んだ・・

ウワーなんだこりゃ、、ビールが喉から腹の中へとシュワ―ッと音を立てるように一気に浸透して身体中に拡がってゆく・・汗を流し水分不足になってるので吸収がまるで速い、ビールの炭酸とアルコールとが体中を駆け巡ってゆくようだ・・それまでに経験のない感覚と美味さだ!これは快感だ~、、

長年飲んではきたがこれほど美味く感じるとは、、こりゃ~クーラーの効いた勤め帰りの一杯とは別物だわ~

♪ ある日の事だった、遠出の現場から帰路の途中にガソリン切れを起こしてしまった、ミスった・・乗用車とはゲージの感度が違ってた・・

ゴメン、ガソリンが切れた・・と、ひと言った矢先に佐藤さんが後部座席のポリタンクを持つや、ドアーを開けて脱兎のごとく走って行った・・まさに瞬時の出来事だった、15分ほどして息を切らせながら佐藤さんはガソリンを持って戻って来てくれた、

佐藤さん、ありがとう、ありがとうございます・・

帰ってからもすぐに佐藤さんにお礼を伝えに行き部屋に入れてもらった、その時に佐藤さんは言ってくれた、

♪ この人のためなら何でもしてやろうと、そう思ったんだ、ん~・・感激して言葉が出なかった、、

♪ 土方仕事はハードだ、企業や会社とかで社員が手に負えないような手のかかるハード作業とかがあるとヘルプとして依頼が来る、山ほどのゴミ処理・重量級の運びモノ(きつい・きたない・危険)の3K仕事の時に出向く、

土方人夫はそれを承知で働くので愚痴ひとつとしてこぼすことはない・・自ら選んでこの仕事に挑み励んでる・・

そんな人達に恐いというイメージを持ったのは間違いだった・ただひたむきで実直に仕事をこなしてゆく・・過去は知らない・・でも今は目が優しい・・

4ヶ月が過ぎて近くにマンションの一室を借りた、手作り弁当を持って通勤することにした・・

・・やがて季節も変わり冬が終わるころに・・卒業の時は来た、、 

(土方殺すには刃物は要らぬ、雨の三日も降ればよい)この言葉は本当だった。   

 ♪  有意義な日々を過ごせた・リフレッシュも出来たし・面白かった!

 

 

./*日付を消す*/.date { display: none; }